11月30日 敵を愛しなさい クリスマスの奇跡パート二 (ひとしずく一三九一)
私はケーキの一つを頂くと、残りのケーキについてのアイデアがひらめきました。駅に何人かいたホームレスの人たちの所に持って行こうと思ったのです。
当時、私は何度か色々な町に出かけて行き、耳を傾けてくれる人たちに聖書の言葉を読んで聞かせるということをしていました。そして、 時々、駅にいたホームレスの人たちは、私の話を良く聞いてくれる人たちでした。彼らは、寒い冬には、暖をとるために駅の待ち合い所にいたのを知っていたので、私はそれらのケーキを持って行きました。
いつもは彼らに御言葉以外、何も分け合うものがない私が、その時はケーキを一人一人に配ることができたのです。とても嬉しい気持ちでした。
ところで、この日だったか、他の日であったかは覚えていないのですが、私は、いつものように市の図書館に行きました。偉大な信仰者達の伝記や彼等の書物を読むのが大好きでした。たとえば、マルチンルターのロマ書講解とかアウグスチヌスの著書などです。大学の授業が終わってから図書館に立ち寄るのは私の日課のようなものになっていました。その日は、図書館に行く途中に、青空市場が開かれていたので、安いジャガイモを目にした私はそれをひと袋買いました。たまには御馳走を食べようと思ったのです。そしてジャガイモの入った袋を手にぶら下げて、 図書館に入ろうとするところで、出会ったのです!私の祈りの答えに導いてくれた人に。
その人は黒い皮ジャンパーのポケットに手を突っ込んだ、坊主頭の、見るからにガラの悪い男性でした。二十代後半の若い男性でした。彼は私を待っていたかのように、いきなり、私の図書館への道を塞ぎ、「少し話があるんだ」と小声で話しかけてきたのでした。
私は、その男性が全くの見知らぬ人であり、怖そうな顔つきをしていたので、無視して過ぎ去ろうとしました。すると彼は豹変して「やい、テメエ、人が話しかけているのに無視するのか!俺は、(ゲンコツを前に出して)これ一発で、お前なんか簡単にぶちのめすことができるんだぞ!」と怒鳴ったのです。
私は相手のこうした態度に少しびっくりしたものの、彼の怒鳴り声以上に、突然、私の心に強く響いたある言葉に衝撃を受けていました。それは、「あなたの敵を愛しなさい」という聖書の中でイエス様の語られた言葉でした。
その瞬間、私の関心は、自分の身を案じるのではなく、相手を愛することに向けられました。イエス様のその言葉が私を突き動かしたからです。
そして私は彼に言いました。
「わかりました。それでは図書館のロビーで話をしましょう」と。
するといきり立っていた彼は急に拍子抜けしたみたいで、「い、いいよ」と私と一緒に図書館に入ったのでした。(続く)