与えられたケーキ
12月29日 与えられたケーキ クリスマスの奇跡 パート一 (ひとしずく一三九〇)
学生の頃、主イエス様と聖書に出会った私は、神様に自分を捧げたいという気持ちでいっぱいでした。毎日、昼になると大学の近くの小川に行っては、祈りを捧げていました。
当時、どうにかしてイエス様の愛を他の学生たちにも知ってほしいと 願っていた私は、聖書研究会という学部をつくったり、またよく友達を教会に連れて行ったりしていました。しかし、それでも満足できず、どうしたら、より多くの人に主の愛を伝えることができるか、とそればかりを考え、それが私の一番の関心事になっていました。
振り返ってみると、神様がそんな私の心の願いを如何に叶えてくださったかがわかります。
その私の祈りの答えは、不思議な形で与えられました。
ある日、大学の授業が終わり、私は学校の外に出たところの交差点で、他の何百人もの学生たちと信号が青になるのを待っていました。すると、横断歩道の向こうで、白衣姿の人が、こちらに向かって手を振って呼びかけているではありませんか。 横断歩道を渡ったところには、ケーキ屋さんがあり、その人はそのお店の人のようでした。
私は、誰に手を振っているのだろうと思いつつ、信号が変わったので大勢の学生たちと一緒に横断歩道を渡り始めました。そしてもう一度、彼を見ると、どうやら私に手を振っているようでした。周りを見ても、手を振っている彼に気づいている学生は一人もいないようです。
それで、私はその人に向かって、私ですか?というふうに自分を指して尋ねると、彼は、そうだ、そうだというふうにうなずいて手招きしています。
そして何だろうと思って彼のそばにいくと、彼は何も言わずにいきなり私に箱を手渡し、すぐに去って行ったのでした。その箱を開けてみると、何とショートケーキが箱一杯に入っていました。
これは本当に不思議な体験でした。 お店を閉める時間でもないので、売れ残ったケーキというわけでもないですし、私はそのケーキ屋さんに行ったこともなく、その人とは全く面識はないので、ケーキをもらう理由など何もありません。なのに、どうして私にそのケーキをくれたのか、今でもわかりません。そして、もう一つ不思議なのが、その人は、他の学生には見えず、 私だけに見えていたようだったということです。しかもその人は、一言も言わず、ケーキの箱を手渡したのです。何もかもが不思議でした。
今、振り返って考えてみると、もしかしたらこの人は、天使ではなかったかと思うのです。
当時私は、一日一食、素うどん一杯の生活をしていました。奨学金や親からの仕送り、さらにバイト代などありましたが、そのほとんどを神様の御用にと捧げていたものですから、私の生活、特に食生活は本当にシンプルで、ケーキなどといったものはあまり口にすることもなかったのです。
そんな私の生活を全て知っているかのように、その人は、何も言わないで私にそのケーキをくださったのです。
そして、このケーキが、後の私の人生を、祈りの答えへと導くものになるとは、この時はまだ 夢にも思えませんでした。(続く)