「ひとしずく」ーーひと昔編
ある植物のお話です。
この植物は、いつも自分の周りに植えられている花について色々と批判や非難ばかりしていました。
この花は、葉が臭くて周りに迷惑をかけているとか、この花は背が高くなり過ぎ、そのお蔭で自分のところは陽当たりが悪くなったとか、また、前に植えられている花のために、栄養が全部持って行かれてしまうとか・・・。
しかし、ある時、この植物は、大きな手によってつかまれたかと思うと、ひょいと土から引っこ抜かれたのでした。そして、こう言うのを聞いたのです。
「美しい花たちよ。お前たちの場所と栄養をとってしまうこの雑草を抜き取ってやったよ。しっかり大きくなっておくれ。」
何と農夫にとって何より迷惑だったのは、この雑草自身だったのでした。
私がこの話を思い出したのは、こんなことがあったからでした。
高速道路を走っていた時のことです。インターチェンジからとても小さな軽自動車が入ってきて、私の少し前を走っていました。私は思わず「わぁ、かわいい、ちっこい車。こんな小さな車でも走るんだな・・・」と感心して見ていたのです。
ところが、サービスエリアに入ってみると、その車が止められていました。そして自分の車をその近くに止めて、車から降りてみたら、な、なんと、私の車は、その車よりさらに小さかったのでした。
実際のところ、駐車場全体を見渡してみても色々な車が止まっていましたが、私の車より小さな車はありませんでした。
私はおかしくなってしまいました。そして、人間の感覚の不確かさをつくづく感じさせられたのでした。
私たちはいつも、こんないい加減な感覚で、物事や人を判断し、ある時は批判さえしているのかもしれないのだな・・・と、何か尊いレッスンを学んだように思いました。
もし人が、自分は何か知っていると思うなら、その人は、知らなければならないほどの事すら、まだ知っていない。(第一コリント八章二節)
自分の目には梁があるのに、どうして兄弟にむかって、あなたの目からちりを取らせてください、と言えようか。(マタイ七章四節)